「貴社の取り組みを拝見し、経営者インタビューの特集を組ませていただきたい」「撮影・掲載にあたり費用は一切発生しません」。
こうしたメールが、会社の問い合わせ窓口や代表者宛てに届くことがあります。取材を受ける機会は多くないので、悪い気はしません。ただ、返事をする前に知っておいたほうがよいことがあります。
この記事では、この種の取材依頼がどういう仕組みで届くのか、返事の前に何を確認すればよいか、断る場合はどうすればよいかを整理します。
まず知っておきたいこと:取材が広告の入口になっている場合がある
取材依頼のすべてが問題というわけではありません。新聞や業界誌、地域メディアからの正式な取材は、普通に存在します。
一方で、「無料の取材」を入口にして、取材後に有料のサービスを提案する、あるいは掲載料や記事作成費を請求する、という営業の形も存在します。この形は「取材商法」と呼ばれることがあります。
多くの場合、違法ではありません。「取材形式で記事を作り、掲載料をいただく」という記事広告のビジネスモデルとして成立しているからです。問題になるのは、最初のメールに費用のことが書かれておらず、後から出てくる点です。無料だと思って受けたのに、話が進んでから費用の話になる。この認識のずれがトラブルになります。
届くメールに共通する特徴
実際に届くメールには、似た文面が多く見られます。別の社名・別の媒体名で、ほぼ同じ文章が届いている例が複数確認できます。つまり、テンプレートで一斉に送られているものです。
よく見られる要素を挙げます。
「費用は一切発生しません」を強調している。 わざわざ書いてあること自体が、費用の話が後に控えている場合の前振りになっていることがあります。
大手企業の掲載実績が並んでいる。 誰もが知る社名が3社ほど並ぶ形です。実際に掲載されているかどうかとは別に、安心感を出すために置かれています。
短い期限が切られている。 「今月掲載分を探しています」「○日までにご返事を」といった形で、考える時間を与えない作りになっています。
電話での相談を求めている。 メールでは詳細を書かず、「お電話にてご相談させてください」と誘導します。電話に出ると、そこで提案が始まります。
撮影スペースへの案内がある。 「弊社の撮影スペースで、より綺麗に撮影できます」という誘いです。撮影した写真の扱いは、後述する確認項目に関わります。
メディアの理念が長く書かれている。 「まだ世に知られていない企業を発掘する」「日本の経済成長に寄与する」といった文章です。媒体の実態(読者数、発行部数、掲載記事の内容)には触れられていません。
これらが揃っているからといって断定はできません。ただ、揃っているなら返事の前に確認するのが安全です。
なぜ自社に届いたのか
「なぜうちに」と思うかもしれませんが、選ばれた理由は特にないことが多いです。
この種のメールは、公開されている企業情報をもとに送られます。ホームページの会社概要ページ、プレスリリース配信サイト、企業データベースなどです。プレスリリースを配信した直後に届くという指摘も複数あります。配信サイトの掲載企業がリスト化されているためです。
つまり、届いたこと自体は「会社概要が公開されている」「情報発信をしている」という、ごく普通の状態の結果です。会社概要ページの整え方は別の記事で扱っています。
返事の前に確認すること
興味があって話を聞いてみたい場合でも、次の点は先に確認しておくと、後で認識がずれません。
1. 費用が発生する場面はどこにもないか
「取材は無料」と「掲載も無料」と「取材後に何の提案もない」は別のことです。
メールで、「取材・撮影・掲載のいずれにも費用は発生しないという理解でよいか。また、取材後に有料サービスの提案はあるか」と、文章で聞いてください。電話で聞くのではなく、書面で残る形です。
明確な返事がない、または「詳しくはお電話で」と返ってくる場合は、その時点で判断材料になります。
2. 媒体の実態を見る
メールに書かれた媒体名で検索し、実際のサイトを開いてみてください。確認するのは次の点です。
- 掲載されている記事の数と、最終更新日
- 記事に読者のコメントや共有がついているか(誰かに読まれている形跡があるか)
- 掲載企業の顔ぶれ(メールに書かれた大手企業の記事が実在するか)
- 運営会社の情報(所在地、設立年、事業内容)
「メディア」と名乗っていても、実態は営業用のサイトで、掲載記事が読まれている形跡がないことがあります。
3. 媒体名や運営会社名で評判を調べる
「媒体名 取材」「運営会社名 評判」で検索すると、同じメールを受け取った人の体験談が見つかることがあります。特に「取材を受けた後どうなったか」まで書かれているものは参考になります。
4. 撮影と写真の扱い
撮影スペースでの撮影を提案されている場合、撮影した写真の権利がどちらにあるか、自社のホームページやSNSで使えるかを確認してください。写真を自社で使うには別料金、という形が後から出てくることがあります。
ホームページの写真や文章は誰のもの?リニューアル時の権利関係の確認ポイント
判断の目安
確認した結果をどう判断するかの目安です。
受けてもよいと考えられる場合:費用が一切ないことが文章で確認できた/媒体に実際の読者がいる形跡がある/取材後の提案がないことが明確
慎重に考えたほうがよい場合:費用の有無をぼかされた/電話でしか説明しないと言われた/媒体サイトの記事に読まれている形跡がない/撮影写真の扱いが不明
受けない方がよい場合:確認の質問に対して急かされた/「今回だけ特別」「他社は皆さん受けています」と言われた
なお、費用の説明を受けたうえで「広告として出す価値がある」と判断するなら、それは正当な選択です。問題は費用の有無ではなく、知らないまま話が進むことです。
断り方
断る場合は、理由を説明する必要はありません。「今回は見送らせていただきます」の一文で十分です。返信しないという選択もあります。
一度返事をすると、電話やメールが続くことがあります。その場合も、対応する義務はありません。営業電話への対応の考え方は、別の記事にまとめています。
ホームページの営業電話や訪問営業を受けたときに確認したいこと
よくある質問
本当に無料の取材もありますか?
あります。地域の新聞やフリーペーパー、業界団体の広報誌、自治体の産業振興サイトなどは、費用が発生しない取材を行っています。この場合、媒体の実態が明確で、費用の質問に即答が返ってきます。
掲載された記事は、自社のホームページに載せてもよいですか?
掲載媒体側の利用条件によります。記事のリンクを貼るだけなら問題ないことが多いですが、記事の文章や写真をそのまま転載するには許可が必要な場合があります。「メディアに掲載されました」というお知らせの書き方は、別の記事で触れています。
ホームページのお知らせに何を書けばいいのか|更新が止まっているときの再開の仕方
取材を受けた後に費用を請求されたら、どうすればよいですか?
事前に「費用は一切発生しない」と書かれたメールが残っているなら、それを示して支払いを断る根拠になります。話がこじれる場合は、消費生活相談窓口(局番なしの188)に相談できます。事業者間の取引でも相談は受け付けています。
同じ会社から何度もメールが来ます
テンプレートによる一斉送信のため、リストに載っている限り届き続けることがあります。対応する必要はありません。迷惑メールとして振り分けて構いません。
取材依頼は、確認してから返事をする
「取材させてください」というメールは、届いた時点では判断できません。費用の有無を文章で確認し、媒体の実態を見て、それから返事をする。この順番を守れば、後で認識がずれることはありません。
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